カラーリングを繰り返すと髪が傷むのは常識なので皆さんご存知かと思います。
でもたまにカラーリングの商品紹介を見ると、
「仕上がりはサラサラ、ツルツル」
「トリートメント入りなので、ツヤツヤで透明感のある髪へ」
など、まるでカラーをしても髪が傷まないような宣伝をしている商品もあります。
実際のところ、カラーリングをすることで髪は傷むのでしょうか?
そこで今回は、カラーリングのくせ毛の関係を深く理解できるように、カラーリングの種類、カラーリングをした髪がどうなるのか、そしてカラーリングで傷んでしまったくせ毛はどうしたらいいのかをご紹介します!
カラーリングの種類
カラーリングといっても、実は色んな種類があります。
カラーリングの種類をまとめたのが以下の表です。
名称 | 主な成分 | 備考 |
ヘアカラー | 第1剤:酸化染料 第2剤:酸化剤 | 酸化染毛剤 |
ヘアブリーチ | 第1剤:アルカリ剤 第2剤:酸化剤 | 脱色剤 |
ヘアマニキュア、 カラーシャンプー | 直接染料(酸性) | 半永久染毛料 |
ヘアマスカラ | 顔料 | 一時染毛料 |
ヘナ | 植物染料 |
ヘアカラー(酸化除毛剤)とは
ヘアカラー(酸化除毛剤)は、毛髪内にあるメラニンを分解して髪色を明るくすると同時に、毛髪内部へ酸化染料が浸透することで発色させます。
ヘアカラーは、通常使用前に第1剤(酸化染料)と第2剤(酸化剤(過酸化水素水))を混合させ、混合液をアルカリ性として頭髪に塗布します。
アルカリ性の条件化では頭髪が膨潤して酸化染料が浸透しやすく、また過酸化水素が活性化することで、頭髪内に浸透した酸化染料の定着(酸化カップリング反応)と、メラニンの分解を促進させます。
ヘアカラーはしっかり染めるようにアルカリ性となっていますが、メラニン以外の組織(毛髪のタンパク質)へもダメージを与えてしまいます。
ヘアカラーによる実際の髪への影響は後述します。
ヘアブリーチ(脱色剤)とは
ヘアブリーチ(脱色剤)は、上記ヘアカラー(酸化除毛剤)から酸化染料を除いたもので、酸化剤(過酸化水素)が毛髪内部のメラニンを分解することで、髪色を明るくします。
ヘアブリーチは、通常使用前に第1剤(アルカリ剤)と第2剤(酸化剤(過酸化水素))を混合させ、混合液をアルカリ性として頭髪に塗布します。
ヘアカラーと同様に、アルカリ性の条件化で使用することから、毛髪へのダメージは避けられません。
ヘアマニキュア、カラーシャンプー(半永久染毛料)とは
ヘアマニキュアやカラーシャンプーは、半永久染毛料と言われ、毛髪内部のメラニンは分解せずに、髪に直接染料を浸透させて着色します。
ヘアマニキュアは、白髪の場合には自然に色がつき、黒髪だとほんのり色がつく程度で、髪色を明るくすることはできず、色合いの持続も2~3週間程度と徐々に色が落ちていきます。
カラーシャンプーも同様の原理で、シャンプーやトリートメントの中に染料が配合されており、髪を洗うたびに着色する仕組みです。
ヘアマニキュアというと、主に白髪染めとして利用されており、カラーシャンプーはヘアカラー後の色の抜けを防止する目的として利用されています。
ヘアマニキュアやカラーシャンプーのような半永久『染毛料』は、前述した『染毛剤』とは異なり、染毛時に毛髪に対する化学的な作用は伴わず、色素生成反応も起こしません。
主にイオン結合によって髪と染料が作用しているため、一般的には毛髪を痛めないという特徴があります。
ヘアマスカラ(一時染毛料)とは
ヘアマスカラ(一時染毛料)は、髪の表面に顔料などを固定し、着色します。
スプレータイプやハケで塗るタイプもあり、いずれも1回のシャンプーで落ちてしまうのが特徴です。
着色に用いられる顔料は、カーボンブラックなどが用いられ、固着力を上げようとすると、髪がごわつくので、一般的にはシャンプーで落ちる程度の着色力です。
ヘナとは
ヘナは、ミソハギ科の植物葉から得られる天然着色料で、淡い赤色にしか染まらないのが特徴です。
ヘナの葉を粉末状にしたものをお湯で溶き、ペースト状にしたものを髪へ塗布し、着色する仕組みです。
参考:伊藤隆司,”頭髪用製品とその作用”,日本香粧品学会誌 Vol. 43, No. 3, pp. 199–208 (2019)
安永秀計,”毛髪の染色法と研究動向”,J.Jpn.Soc.Colour Master.,81[10],388-394 (2008)
健康な髪とカラーリングを繰り返した髪の違い
健康な髪
出典: K/Koike et al., “超高圧電子顕微鏡による毛髪構造解析”,顕微鏡 Vol. 43, No. 4 (2008),p259
上の写真は、超高圧電子顕微鏡を使って、髪の毛の断面を撮影した画像です。
外周に見える層がキューティクル(Cuticle)で、中に詰まっているのがコルテックス(Cortex)、コルテックスの中の黒い点がメラニン、中心部にあるのがメデュラ(Medulla)です。
下の図が髪の毛の模式図ですが、断面がほぼ図の通りになっていることがわかります。
カラーリングを繰り返した髪
出典: K.Koike et al., “超高圧電子顕微鏡による毛髪構造解析”,顕微鏡 Vol. 43, No. 4 (2008),p261
上の写真は8回ヘアカラーをした髪(毛先)の断面図です。
先ほどの写真と比べると違いは明らかですが、カラーリングでダメージした髪と健康な髪の違いは、
- 表面のキューティクルが完全にない
- ほとんどのメラニンは分解されてなくなっている
- 白い点に見えるのは空洞(ダメージホール)
ヘアカラーはメラニンを分解することで髪色を明るくしますが、髪のタンパク質を分解・流出させてしまうため、髪内部に空洞ができてしまいます。
出典:株式会社アリミノ, “プロのケア力”, 株式会社髪書房, (2007).
上の写真は、ブリーチを施術した際の、毛髪表面の拡大画像(走査型電子顕微鏡(SEM))です。
ブリーチ処理回数が増えるにしたがって、表面のキューティクルの浮き上がりや剥がれの様子が確認され、徐々に断面図のような髪になります。
ヘアカラーを繰り返すと、手触りが悪くなり、パサパサになって広がったり、切れ毛になったりと髪全体が脆くなってしまいます。
見た目にはこんな感じでしょうか。
こちらは昔の管理人の髪ですが、縮毛矯正とカラーリングを繰り返して毛先がパッサパッサです。
広がりを抑えるためにコテで毛先を巻いていたのでさらに毛先を傷め付けていました。
街中でもたまに見かけるハイダメージな髪です。
ヘアカラーは髪が痛むというのは間違いなく事実ということが確認できましたでしょうか。
カラーリングするとくせ毛になる?
直毛がカラーリングをした場合
髪の毛の約90%は、コルテックス(毛皮質)と呼ばれるケラチンタンパク質でできています(上の図の緑色の部分)。
このコルテックスは、以下の2種類のタンパク繊維から成り立っています。
- Pコルテックス(パラコルテックス) :硬い
- Oコルテックス(オルトコルテックス):柔らかい
2種類の性質が異なるコステックスが毛髪を構成しており、ブリーチによる影響もパラコルテックスとオルトコルテックスで異なることが報告されています(研究では、ブリーチ処理により弾性率(変形のしにくさ)が異なることが示唆されています)。
つまり、毛髪内部組織に対するブリーチ処理の影響が髪内部で不均一に発生することで、後天的なくせ毛を発生させているのではと考えられています。
直毛がヘアカラー(ブリーチ)をする ⇒ くせ毛発生の可能性あり
くせ毛がヘアカラーをした場合
くせ毛も直毛と同様に、パラコルテックスとオルトコルテックスという2種類のタンパク繊維から成り立っていますが、その分布が偏っていることが原因でくせ毛になっている方もいます。
くせ毛の場合は直毛と異なり、ヘアカラー(ブリーチ)をする前から髪がどちらかにカールしていますが、カールの外側か内側でブリーチ処理の影響に差が出てしまうことが知られています(カールの内側と外側で、同じコルテックスであってもブリーチ処理による弾性率の変化に差が発生します)。
つまり、くせ毛の場合には、そもそも2種類のコルテックスの違いに加え、カールの内側と外側でもブリーチ処理による影響に差が生まれ、より一層クセが酷くなってしまいます(内部構造がより不均一になる)。
くせ毛がヘアカラー(ブリーチ)する ⇒ より一層くせ毛になる
出典: 名和哲兵., “原子間力顕微鏡による毛髪に対するブリーチ処理の影響に関する研究”,東北大学理学研究科化学専攻博士論文 (2013),p95.96
カラーリングで傷んだ髪はどうしたらいいの?
これまでご紹介した通り、カラーリングを行うと、髪へのダメージは避けられません。
では、カラーリングをしてしまった後ではどうしようもないのかというと、いくつかの点に気を付ければ今からでもくせ毛対策は十分に行えます。
それでは、カラーリング後の具体的なくせ毛対策を紹介します。
①追加のカラーリングは部分染めをメイン
ヘアカラーは繰り返すほどそのダメージが大きくなり、クセがより一層強くなってしまうため、なるべく同じ部位へのヘアカラーの繰り返し施術を避けるようにします。
もし追加でヘアカラーを実施する場合には、新しく生えた新生部を中心に部分染めとし、全体へのヘアカラーの頻度を少なくすれば、極力追加のダメージを避けられます。
②すべりを良くする
ヘアカラーの施術後は、施術前と比べて摩擦や引っ張りに対して弱くなっています。
髪がきしんだり、引っかかる状態というのはキューティクルが傷ついている状態であり、それを無理やりクシでとかすとより一層髪が傷み、くせ毛は悪化してしまいます。
特に、髪が濡れているときは、普段よりも髪が柔らかく傷みやすい状態となっているので、髪が乾くまでの間、滑らかな状態を維持できるような流さないトリートメントを使うことが大切です。
洗い流さないトリートメントで管理がおススメする製品は、こちらです。
【エルジューダMO】
管理人が実際に使ってみたレビューはこちらです。
③髪を補修する
補修でくせ毛対策
ヘアカラーを施術すると、キューティクルが傷つき、また髪の内部にはダメージホールといった空洞ができています。
ヘアカラーのダメージを受けてできたダメージホールを髪と似た成分で埋めて(補って)あげると、髪のパサつきや広がりを抑えやすくなります。
外側をコーティングするオイルなどとは違って内側を補修していくため、髪自体の美しさや強度もアップするのでコーティングよりも重要です!
補修の方法
補修といえばトリートメントを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、一番大切なのはシャンプーです。
補修を考えたシャンプーの選び方で大事なのは、「アミノ酸系の洗浄成分」で「補修力の高い成分」が入っている製品を選ぶことです。
既にヘアカラーでダメージを受けて弱った状態の髪に、洗浄力の強いシャンプーを使うとより一層クセが悪化してしまいます。
そこで、髪の主成分でもあるアミノ酸と同じ成分でできたアミノ酸系洗浄成分の使われたシャンプーは髪や頭皮にも優しく、汚れだけを落として潤い成分を残してくれます。
また、シャンプーで汚れを落とすと同時に、補修成分が入ったシャンプーを使えば、その成分が髪へ浸透し、毛髪の強度や水分量を健康な状態へ戻してくれます。
具体的に補修能力の高いおススメの成分は以下の2つです。
・ジラウロイルグルタミン酸リシンNa
高い補修能力が特徴で、1分程度で髪内部に浸透し、ダメージでやせた毛髪の太さも回復させ、毛髪にハリやコシを与えます。
また、角質層への高い浸透性も有し、肌のバリア機能のサポートや保水性を高めるなど、肌荒れの改善にも効果的な成分としてスキンケアにも使われています。
・ポリペプチド
ジラウロイルグルタミン酸リシンNaには劣りますが髪の補修力が高いのが特徴です。
ポリペプチドとは、天然由来のタンパク質加水分解物のことで、タンパク質を小さく分解して水に溶けやすくした成分です。
髪と同じ構造の成分でできており、ダメージを受けて失われたタンパク質を補う効果があります。
シャンプーの成分表には下記のように表記されています。
・加水分解ケラチン
・加水分解コラーゲン
・加水分解シルクなど
おすすめ!補修力の高いシャンプー!
「アミノ酸系洗浄成分」で、「高い補修成分」のジラウロイルグルタミン酸リシンNaやポリペプチドが入ったシャンプーを選べばよいとお伝えしましたが、それに該当する管理人オススメのシャンプーはこちらです。
【フィヨーレ Fプロテクトシャンプーベーシック】
サロン専用シャンプーの中では比較的安く手に入り、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaなどの髪補修成分がたっぷり入っているのが特徴です。
実際に管理人が使ってみたレビューはこちらです。
まとめ
カラーリングが髪に与える影響を顕微鏡での画像などで見てみましたがいかがでしたでしょうか?
カラーリングは髪の内部にあんなにダメージを与えているとはびっくりですね。
さらにくせ毛さんはブリーチ剤でさらにくせが強くなってしまうなんて・・・
オシャレを考えるとカラーリングをやめるわけにはいかない方ってたくさんいるかと思います。
なので傷んだ髪をしっかりケアしてうまく付き合っていきましょう!
特にくせ毛さんはしっかりとしたケアを学んで正しいケアが大切です♪
くせ毛の原因を知りたい方はこちらも合わせて読んでみてください。
また、くせ毛対策室管理人のおススメするシャンプーはこちらです。